(初めての方は「蒼井空太のブラック研究室脱獄記」から読むことをおススメします)
父親に説教された次の日。
俺は9:00に目覚めた。
この時間にはもう誰もいないだろうと思い、
リビングに降りた。
家はガランとしており、
予想どおり誰もいなかった。
昨日のことを思い出すと、
憂鬱な気分が襲ってきた。
なぜか自分の父親と、
あの大嫌いな准教授の顔が被った。
だんだん家にも居場所がなくなってきて、
(これじゃあ研究室と同じじゃないか)
と思った。
一晩明けて少し冷静になったのだが、
それでも大学には戻りたくなかった。
俺は、
相談できる人が必要だと感じた。
朝ごはんを食べ、
猫を撫でた後は、
行きつけの心療内科へ行くことにした。
自転車にまたがり、
3キロほど離れた病院へ向かう。
俺は、先生に自分の気持ちを理解してほしかった。
病院に着き、
受付を済ませ、
しばらく待っていると、
自分の名前が呼ばれた。
俺は先生の所へ向かう。
俺がドアを開けると、
先生がにこにこして俺のことを出迎えてくれた。
先生は開口一番、
「今日はどうなさいましたか?」
と俺に尋ねてくれた。
「あの、親に大学に戻れと言われてしまって・・・」
それから俺はどんなことがあったか先生に話した。
昨日のこと、
自閉症スペクトラムではなかったこと、
大学へ戻りたくないこと、
先生はうんうん、そうなんだ、と
俺の話を静かに聞いてくれた。
そして、開口一番俺に謝った。
「すみませんでした。あんな診断書書かなければよかったですね」
「え・・・」
俺はびっくりした。
謝られるとは思っていなかったからだ。
「あ・・・いえ、あれはあれで自分の得意なことが分かりましたし・・・」
「でもご両親はそれを間違った方向へ曲解させてしまったんですよね・・・」
それから俺は先生と少し雑談をした。
将来のこと。
俺の子供時代のこと。
俺の得意なこと。
ちなみに先生は美人さんだ。
眼鏡にポニーテールでこんな感じ↓なのだ。
俺がボケーッと先生の顔を見ていると、
先生は突然、こんなことを言い始めた。
「会社でうつ病になった人を3カ月間休ませて、
また復帰させる制度があるじゃないですか。
蒼井さん知ってますか?」
「ふぇっ!?・・・あ、いえ、知りません。そんなのがあるんですね」
いきなりの不意打ちだったので、
びっくりしちゃったYO☆
「はい、それで
会社に復帰した人たちがその後どうなるか
ご存知ですか?」
(うつ病になった人間が会社に復帰したら・・・?)
俺は見当もつかなかった。
「うーん・・・わかりません」
「その人たちはまたうつ病を再発させるんです」
「えー!!」
俺はおどろいた。
そんなの復帰させるだけ無駄じゃないか・・・・。
「実はうつ病をはじめとする精神疾患というのは、
身体が発しているアラームなんです。
”あなたの人生の方向性そのものが間違っていますよ”
というアラーム。
つまりそのアラームを無視して会社に復帰すると・・・」
「今度はもっと大きなアラームが鳴る・・・ですか?」
「その通りです。再びうつ病を発症するのですが、
今度は前回よりもさらに症状がひどくなります」
「じゃあもし僕が研究室に復帰すると・・・」
「適応障害が再発するでしょうね」
「えええ~~~・・・・。じゃあどうすればいいんでしょうか」
先生は、申し訳なさそうにこう言った。
「すみません、親とバトルしていただく以外ありません。
私はただの医者なので、診断書を書いてあげることぐらいしか・・・」
「ああ・・・、そう・・・ですよね」
親とバトル・・・か。
ただ、俺は口喧嘩がめっぽう弱かった。
小学生の女の子と戦っても負けるだろう。
女子小学生「はあ?あんた、
バッカじゃないの?」
俺「ふえぇ・・・ごめんなひゃい・・・負けましたぁ・・・」
↑こんな感じだ。
というか、誰かに怒鳴ったことすら一度もないからね。
昨日だって、両親二人を相手にしたら、
いくら口答えしたって言いくるめられていただろう。
正しいことを言って通用する相手ではないのだ。
じゃあどうすれば・・・
このとき、突然だが俺の頭には
あるインスピレーションが浮かんだ。
虎とウサギが対峙している絵だ。
虎と・・・ウサギ・・・?
俺は慎重に考えた。
前回の簿記のときもそうだが、
俺の頭に浮かぶインスピレーションは、
困った事態を打開するヒントになりうる。
「そうだよな、源さん!」
「そうやで!」
「はい?源さん?」
先生は困ったように俺に尋ねた。
「ああ、いえ、こちらの話です」
(うおおおおお!!!超恥ずかしいいいいいいい!!!!独り言聞かれたあああああ!!!!!)
にしても虎とウサギ・・・か・・・。
俺は無理矢理冷静になった。
あごに手を当てて、
コナン君スタイルで考えてみる。
(ふつう虎とウサギが戦ったら虎が絶対勝つよな)
俺がウサギだったら足の速さを活かして逃げるが・・・
「はんっ・・・!」
「どうしました・・・!?」
俺は再び驚いて変な声を上げた。
(せや!逃げればええんや!)
俺の瞳に光が宿った。
先生は俺の表情を見てニヤリとした。
「なるほど・・・よくわかりませんが、何か掴んだようですね」
「ええ、これならひょっとしたら何とかなりそうですよ・・・」
「ふふふふふ・・・」
「ふふふふふふ・・・」
俺と先生は悪代官と越後屋のような不敵な笑みを浮かべた。
俺が考えたのは、
小学生でも思いつくような、
クソしょうもないアイデアだった。
どう考えても親には討論で勝てない。
だったら
家庭内で親から逃げればいい。
つまり引きこもりだ。
俺だってだてにライトノベルばかり読んでいただけじゃない。
ライトノベルには
数多くの引きこもり主人公
が登場するのだ。
ラノベで読んだ知識が俺の頭の中でスパークを起こし、
ひきこもりというベストアンサーを導きだした。
それからというもの、
俺の
ISG作戦が始まった。
説明しよう。
ISG作戦とは、
和泉 紗 霧
I S G作戦
の略称である。
ただの引きこもりだけどな!!!
だが、この行為が、
さらなる悲劇を引き起こしてしまうなんて、
この時は思いもしなかったんだ。
次回
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